『おおかみこどもの雨と雪』を観てきました。

はじめに

各所で話題になっていますね。やっぱりサマーウォーズの影響が大きいのでしょうか。さて、めんどくさい前置きは抜きにして、ざっくばらんに感想を書いておきたいと思います。ネタバレありますので、観てない人はご留意下さい。

雑感とかツッコミとか

 この映画を見た感想で、おそらく1番的はずれなのが「大学生で子供を産むなんてー。」とか「避妊って大事だね。」などだと思います。同様の感想を私も見た当初は持っていたのですが、こういった感情を抱く自分は、どこかスレて頭が固くなっているのではないかと気が付きました。

 世間(主にインターネット)の荒波に揉まれていくうちに、「学生が結婚や出産なんて馬鹿じゃないか。」「避妊しないなんて糞だ。」という考えが絶対的正論として、自分の中に形成されてきた事に気が付きました。本当に愛し合っているのならば、学生であろうと子供を産むことだってできる。もちろん苦労はするだろうけど、それ以上に好きな人の子供を産めることが幸せ。という考え方もあり、それは決して愚考ではないのです。ちなみに、花がおおかみおとこの事をどれだけ愛していたかは、事に及んだ夜に、人間の姿ではなく『おおかみおとこの姿』で受け入れた事から分かります。また、花自身がとても真面目で勤勉な学生であることからも、彼に対する愛情の真剣さが伺えます。もし彼女が街や野山を裸足で放浪するヒッピー風の森ガールだったら、こんな受け止め方は出来なかったでしょう。

 そんなこんなで2人(匹)の子供が産まれた後、おおかみおとこは急死します。なんかもうあっさり死にすぎて、びっくりしました。最終的におおかみおとこは、ビニール袋に入れられてゴミ収集車にポイされます。びっくりしました。この描写を深読みすると『もはや都会の人達は狼とデカイ野良犬を区別出来ないほどに、その存在を忘れてしまっている。』と受け取れます。こうして、物語はシングルマザー奮闘記へと移行します。

 奮闘記は、子供嫌いの私としては結構しんどかったです。うるさい、ひたすら雪うるさい。ちょっと大人しくしてなさい。たぶん、こども好きな人からすると「雪ちゃんかわいかったー!」になるんでしょう。しかしうるさい。そんな元気だった雪も、小学校に入りしばらくすると大人しく品行方正になっていきます。なるほど、女の子の方が成長が早く、野郎はいつまでたってもガキのまんまだという事がよく分かります。雪がおとなしくなる転換点で、花は雪の結晶模様の青いワンピースを仕立てます。この作品では、服装が成長のメタファーになっている気がします。赤から青にかわった雪に対して、雨の服は白から灰色に変わっています。さらに、雨の服の襟はヨレヨレになっています。父であるおおかみおとこの服は白、そして襟はよれているんですね。襟がよれてしまうのは、頻繁に狼になっているからなのでしょうか。服の色では、雨が父よりも色濃く狼に近づくと示しているのかもしれません。

 2人の喧嘩シーンですが、雨がごはんを食べるテーブルをひっくり返していますね。この時点で、決別感満載です。喧嘩の内容が『人間として生きるか狼として生きるか』でしたので、これから2人は違う道を歩くんだなぁとわかります。ちょっとさみしい。そうそう、映画で大事な食事のメタファーですが、焼き鳥が大変エロ美味しそうでした。

 また、なんといってもこの映画では花、つまり母親の強さに焦点を置いていると思います。崖から落ちて丸太で盛大に腹部を殴打、さらに落下した後に雨晒しの状態で朝まで生きているとかすごすぎます。落下したのが18時〜20時、それから朝日が登る前まで気絶。ああいった山間部は夜が早く朝が遅いので、短くても10時間は仰向けで雨に打たれ続けています。最悪低体温症で死にます。きっと、おおかみおとこと関係を持ったことで、花にも野生のパワーが宿ったのでしょう。きっとそうだ。おそらく、観客のほとんどがおおかみおとことの再会シーンで「あ、死んだのかな。」と思ったはずです。「だから作中ずっと雪の声でナレーションしてたんだな。」とか思ったはずです。ところがどっこい生きている。

 ところで、雪が勉強シーンでは右手でペンを握っていたのに、バドミントンの写真だと左手でラケット握ってた気がするのは気のせいでしょうか。ラケットスポーツで利き手と逆の手の方が、動きやすくなる人もいますけど、そんな設定ここで必要なのかな。

 大事なことを忘れていました。本作の萌えキャラです。サマーウォーズではカズマ君という実に素晴らしいヒロイン(女じゃないとか、こまけぇこたぁいいんだよ!)を描き上げた細田監督ですが、今作では韮崎のおじいちゃんがその立ち位置でした。なんかもう、おおかみおとことかどうでもいいし、雪も雨も好き勝手に生きれば良い。韮崎のおじいちゃんが、ツンツンしながら花一家の生活を心配しているだけで、おなかいっぱいです。この映画の全てが、おじいちゃんを引き立たせる為だけに存在していると言っても過言ではないと思いました。

まとめ

 おじいちゃんかわいい。